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科学関連 2025/11/28

電気泳動とは|原理や種類をわかりやすく解説

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DNAの解析実験やタンパク質の研究で「電気泳動」という言葉を聞いたことはありませんか?バイオ実験の基本技術として幅広く使われる電気泳動ですが、「原理がよくわからない」「種類が多くてどれを選べばいいのか迷う」という声をよくお聞きします。電気泳動は、電場を利用して生体分子を分離・解析する技術で、DNA・RNA・タンパク質の研究に欠かせない手法です。本記事では、電気泳動の基本原理から、アガロースゲル・ポリアクリルアミドゲル・キャピラリー電気泳動といった主要な種類、さらに実際の操作手順まで、図解を交えて初心者の方にもわかりやすく解説します。

電気泳動とは

電気泳動とは、電場をかけることで、DNA・RNA・タンパク質などの生体分子を電荷やサイズの違いによって分離・解析する実験技術です。

この原理を利用し、ゲルなどの支持体の中で電気泳動を行うと、分子の大きさや電荷の違いによって移動速度が変わります。ゲルの網目構造により、小さい分子は通り抜けやすく速く移動する。一方、移動速度には分子の電荷も影響し、特に変性していないタンパク質などでは電荷/形状の違いも分離の要因となります。

電気泳動は、遺伝子研究(PCR 製品のサイズ確認、遺伝子クローニング)やタンパク質分析(SDS-PAGE による純度確認や分子量の推定)、創薬研究(標的タンパク質の発現チェック)など、研究用途で広く活用されています。

電気泳動の原理

電気泳動は、電場の中で荷電した分子が移動する性質を利用した分離技術です。

DNAやタンパク質などの生体分子は、電荷を帯びています。電気を流すと、正に荷電した分子は負極(陰極/カソード)へ、負に荷電した分子は正極(陽極/アノード)へと移動します。

DNAはリン酸基により強い負電荷を持つため、常に陽極方向へ移動します。一方、タンパク質はアミノ酸組成に応じて電荷が変化し、泳動バッファの pH によって正にも負にもなり得ます。

アガロースやポリアクリルアミドなどのゲルは三次元の網目構造を持ち、この構造が「分子ふるい」として機能します。分子サイズが大きいほど網目を通過しにくく、移動速度は遅くなります。

結果として、一定時間後にはサイズが小さい分子ほど遠くまで移動し、サイズが大きい分子ほど手前に留まる形で分離されます。

移動度は主に「電荷」と「サイズ」の2要素で決まりますが、実際には分子形状、ゲルとの相互作用、電場強度なども影響します。これらの要因により、混合物中の分子を効率的に分離・解析できます。

電気泳動でバンドがあると何がわかる?

電気泳動後、ゲルをエチジウムブロマイド(DNA/RNA染色によく用いられるが、現在ではSYBR Greenなど安全性の高い代替品も利用される)やクーマシーブリリアントブルー(タンパク質染色に一般的)などの染色試薬で処理すると、分離された分子がバンドとして可視化されます。

このバンドの存在によって、サンプル中に特定の分子量を持つ物質が含まれていることが確認できます。バンドの位置は分子量に対応しており、分子量マーカーと比較することで、未知の分子の大きさを推定できます。特に SDS-PAGE では、マーカーを同じゲルで泳動し、検量線 (対数分子量 vs 移動距離) を引く必要があります。

さらに、バンドの濃さ(蛍光強度)から分子の濃度や量を判断することが可能です。分子量が大きく量が多いほどバンドは強く光り、逆に量が少ないとバンドは薄くなります。ただ、非常に大きな分子や変性条件、構造異性 (スーパーマイザー化DNAなど) の場合、移動性が異なり、バンドの形や強度が予想と異なることがあります。ゲルやバッファ条件、電荷、折りたたみ構造なども影響します。

バンドの濃さ(蛍光強度)から量を推定することはできますが、定量するためには標準ラダー(既知量)との比較や、ImageJなどの画像解析ソフトが必要になります。また、過飽和や背景の影響にも注意が必要です。

また、バンドのシャープさや数から、サンプルの純度や品質を評価できます。電気泳動は純度 (不純物の有無) の目安になりますが、定量的な純度 (パーセンテージ純化) を正確に評価するには、画像解析や他の方法 (例えば質量分析や高性能液体クロマトグラフィー)が必要なことも多いです。単一のシャープなバンドは高純度を示し、複数バンドは混合物や分解産物を示唆する一方で、修飾、オリゴマー化、または異なる構造状態 (折りたたみ、変性) の可能性もあります。こうした情報は、遺伝子のクローニング確認やタンパク質の精製度チェックなど、さまざまな研究場面で活用されています。

電気泳動の種類

電気泳動には、分析対象や実験目的に応じて複数の手法が開発されています。もっとも広く普及しているのは、ゲルの網目構造を利用した方法ですが、近年では微細なキャピラリーを用いた高精度な分析技術も実用化されています。それぞれの手法は、分離できる分子のサイズ範囲や操作の難易度、必要な試料量などが大きく異なるため、研究目的に合わせた適切な選択が求められます。

ゲル電気泳動

ゲル電気泳動は、生体分子の分離に最も広く利用されている手法です。

ゲルの網目構造を利用することで、分子サイズによる効果的な分離が実現します。代表的な方法として、アガロースゲル電気泳動とポリアクリルアミドゲル電気泳動があり、それぞれ異なる用途に適しています。

アガロースゲル電気泳動は、その大きな網目構造から、一般的には約 0.5~20 kbp 程度の DNA 断片の分離に適しています。

ただし、ゲルの濃度やアガロースの種類(メーカー製品)によって分離可能なサイズ帯は変動し、一部の製品では最大 30 kbp に対応するものもあります。

一方、ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE)、特に SDS を用いた変性条件 (SDS-PAGE))は、多くのタンパク質・ポリペプチドの分子量差に基づいた分離に適しています。

一般的には約 5~250 kDa 程度までの分子量のタンパク質が分離対象とされます。SDS はタンパク質にほぼ一定割合で結合し、負電荷を与えて構造を変性させることで — 元々の立体構造や電荷分布の違いをなるべく排除し — 主にポリペプチド鎖長 (すなわち分子量))に応じた移動を可能にします。

そのため条件を最適化すれば、比較的高精度かつ再現性の高い分離が可能であり、さらに分離後のゲルはウェスタンブロッティングなどの解析の前処理として広く使われています。

キャピラリー電気泳動

キャピラリー電気泳動は、内径数十 μm(一般には約 20–100 μm)のシリカ製キャピラリーが用いられ、高電圧(-30 kV ~ +30 kV 程度)が印加されることが一般的です。

キャピラリー管内では電気浸透流 (EOF) が生じ、これにより陽イオン・中性分子・陰イオンが同時に移動することが可能です。

ただし、実際の一斉分析では、分析対象(イオン種、中性分子など)や検出方法、バッファ条件を最適化する必要があり、「すべてを一度に測定できる」ことが常に自明というわけではありません。

DNA シーケンシング(特に従来型キャピラリーシーケンサー)や医薬品の分析(無機イオン、有機分子、アミノ酸、薬剤など)でも応用されています。

また、装置の自動化が進んでおり、一度にデータ量が多く負荷の高い分析にも適しています。

電気泳動のやり方

電気泳動の基本的なやり方・流れは、ゲル調製・サンプル調製・泳動・検出の4ステップで構成されます。

まずゲル調製では、分離したい分子のサイズや目的に応じて、アガロースまたはポリアクリルアミド (アクリルアミド + ビスアクリルアミド) の濃度を調整します。

アガロースゲルは、たとえば数百 bp 〜数 kb の小〜中サイズ DNA から、数十 kb の大きめ DNA まで幅広く用いられます。ただしゲル濃度の目安(例えば 0.6–1.5%)は、DNA サイズ、バッファー条件、ゲル厚、泳動時間、目的 (分離 vs 回収) により最適化されます。

ゲルを注ぐ際は、溶解したアガロース溶液を適温 (触ってやけどしない程度まで冷ます) に冷まし、気泡が入らないよう静かに注ぎ、コームでウェルを作り、完全に固まった後に泳動を開始します。

サンプル調製では、DNA/RNA はローディングバッファー (スクロースまたはグリセロール等 + 色素)、タンパク質は SDS + 還元剤 + 加熱変性 (SDS-PAGE 用) を行い、電荷と構造を均一化します。

泳動は、使用機器・ゲル・バッファー条件・目的に応じて、定電圧/定電流/定電力のいずれかを選択します。多くの場合アガロースでは水平泳動 (水中モード) が一般的ですが、用途によって他方式が使われることもあります。泳動バッファーはゲルを完全に浸す量を入れ、泳動時間や電圧/電流は分子サイズやゲル条件に応じて適切に調整します。

最後に染色・検出を行います。DNA/RNA 用には蛍光色素 (例: SYBR 系) や色素 (例: エチブロ) を、タンパク質用にはコマッシーブルー染色や銀染色などを用います。泳動後はバンドの大きさ (分子量) 比較や定量 (蛍光強度など) を行い、必要に応じてバンド切り出し+回収も可能です。

製品例:電気泳動装置

まとめ

いかがでしたか?本記事が、電気泳動の原理や種類、実験の基本的な流れを理解する一助となれば幸いです。