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科学関連 2025/12/17

分光測色計とは|原理・使い方・種類をわかりやすく解説

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「製品の色にばらつきがあって、クレームが減らない…」「目視検査だけでは品質基準を満たせない」そんな悩みを抱えていませんか?生産ラインや品質管理の現場で色を正確に数値化できる分光測色計は、非常に有用な測定機器です。本記事では、分光測色計の基本から種類、そして使い方までわかりやすく徹底解説します。

分光測色計とは

分光測色計とは、物体の色を客観的な数値データとして測定・管理するための精密測定機器です。人の目による色の判断は、照明条件や体調、個人差によって大きく左右され、「同じ色に見えるかどうか」が必ずしも一致しません。この主観的なばらつきを排除し、製品の品質を安定して管理するために用いられるのが分光測色計です。

分光測色計は、物体の表面から反射された光を波長ごとに分解して測定し、その結果をL*a*b*値が一般的ですが、機器やソフトウェアによっては他の表色系(例:マンセル値)で数値化します。これにより、色の微妙な違いを誰が測定しても同じ基準で評価でき、客観的な色管理が可能になります。主に反射測定ですが、積分球を用いることで透過測定も可能な機種があります。

製造業での塗装・印刷・樹脂などの品質管理だけでなく、一部の美術館・博物館では文化財の色の記録や修復、研究にも活用されるなど、あらゆる場面で重要な役割を果たしています。

分光測色計の原理・仕組み

分光測色計の原理・仕組み
分光測色計の原理は、測定対象に光を照射し、反射または透過した光を波長ごとに分解して色を数値化することにあります。分光測色計の仕組みは、まず可視光(約380〜780nm)の各波長ごとにどれだけ光が反射・透過されたかを測定し、そのデータを「分光反射率」として取得するところから始まります。

この分光反射率に対して、CIE(国際照明委員会)が定める標準観察者の等色関数を適用し、積分計算を行うことで三刺激値(X・Y・Z)を算出します。さらに、これらの値を基にL*a*b*値やマンセル値などの表色系へ変換することで、人間の視覚を客観的な数値として表現できるようになります。

このように、分光測色計は人間の目の「赤・緑・青」に対応した感覚特性を数学的に再現することで、誰が測定しても同じ基準で色を管理できる仕組みを実現しているのです。

分光測色計の用途・使い方

分光測色計の用途・使い方
分光測色計は、製造業から食品分野まで幅広い業界で、色のばらつきを客観的に管理するための実践的なツールとして活用されています。自動車業界ではボディ塗装・バンパー・内装パネルなど複数部品間の色差を管理し、塗料業界では調色や配合比率の最適化に役立ちます。プラスチック業界ではロット間の色ずれを早期に検出し、食品業界では焼き色や果汁の色味を数値化して製品の均一性を保つことができます。食品の色測定には、反射測定用アクセサリや透過測定ユニットが必要な場合があります。

さらに、測定データを品質管理システムと連携し、インライン測色計やネットワーク対応ソフトを併用することで、基準値からの逸脱をリアルタイムに自動検知し、不良品の流出を防止できます。このように分光測色計は、目視検査に加えて客観的な数値評価を可能にし、品質管理精度を大幅に高めます。
業界 主な用途 測定対象例
自動車 塗装・内装の色管理 ボディ、バンパー、内装パネル
塗料 配合比率の最適化、調色 塗料サンプル、塗装面
プラスチック 樹脂部品の色品質管理 成形品、ペレット
食品 製品の色味の均一化 焼き色、果汁、調味料

分光測色計の種類

分光測色計は、設置場所や測定環境によって最適なタイプが異なります。研究室での高精度測定を重視するのか、製造現場での機動性を優先するのか、それとも生産ラインへの組み込みを前提とするのか。用途によって選ぶべき機種は大きく変わってきます。ここでは、代表的な3つのタイプについて、それぞれの特徴と適した活用場面を具体的に見ていきましょう。

ベンチトップ分光測色計

ベンチトップ分光測色計は、研究室や品質管理室に設置する据え置き型の測定機器です。高精度なセンサーと安定した光学系を搭載しており、ポータブル型と比較して測定精度や再現性に優れています。

積分球を備えたモデルでは、反射色と透過色の両方を測定でき、測定径の切り替えにも対応しています。一部のモデルは温度や湿度を自動的にモニタリングする機能を持つ機種もあり、測定環境の変化による誤差を最小限に抑えられます。

大きなメリットは、基準色の作成や厳密な色差管理が求められる場面で威力を発揮する点です。自動キャリブレーション機能により、長期にわたって安定した測定精度を維持できますが、完全自動で毎回キャリブレーションまで行う機種は限定的です。

一方で、本体サイズが大きく持ち運びができないため、現場での測定には不向きです。また、導入コストも高めとなる点には注意が必要でしょう。

ポータブル分光測色計

ポータブル分光測色計は、手のひらサイズで持ち運びが可能なハンディタイプの測定機器です。製造現場や生産ラインで直接測定できるため、塗装ブースや成形機のそばで色を即座に確認し、不良品を早期に発見できます。

測定スピードは約0.7秒~1秒と高速で、大量の製品を短時間で検査する際に作業効率を大きく向上させます。樹脂部品や自動車内装パネルなど、大型で据え置き型の測定機器まで運べない対象物にも、直接測定面を当てて色データを取得できる点が魅力です。

測定径はΦ3mm~Φ11mm程度まで選択可能な機種が多く、小さな部品や曲面への対応も柔軟です。バッテリー駆動で1,000回以上の連続測定が可能なモデルもあり、一日中現場で使い続けられます。

ただし、据え置き型と比べると測定精度はやや劣るため、研究開発など極めて高精度が求められる場面では、ベンチトップ型との使い分けが重要です。

ハンディタイプ分光測色計の詳細はこちら。

インライン分光測色計

インライン分光測色計は、製造ラインに直接組み込み、製品を多くは非接触で連続測定できる産業用測定機器です。リアルタイムで色の変化を監視するため、製品が仕様から外れ始めた瞬間にオペレーターへ警告を発し、不良品が大量発生する前に修正できます。

コイル塗装の現場では、トラバースビームに測色計を取り付け、マルチポイント測色で幅方向の均一性を確認します。

プラスチック業界では、造粒機の後ろにシステムを設置し、合成ペレットの色ズレを成形前に検出することで、無駄なバッチを大幅に削減できます。

ネットワーク化されたデータにより、異なる工場間でも色基準や測定値を共有でき、グローバルな品質管理体制を構築できる点も大きな魅力です。

分光測色計と分光光度計の違い

分光測色計と分光光度計は名称が似ていますが、主な用途や評価指標が異なる機器です。(光学原理は共通点が多く、機種によっては両方の測定に対応するものもあります。)分光測色計は主に塗装面・プラスチック・紙など、不透明な固体表面の反射光を測定し、色をL*a*b*値などで数値化するために使われます。一方、分光光度計は液体や透明材料を対象に透過光や吸光度を測定し、溶液の濃度分析や成分評価・色評価(色度、透過色)に用いられます。主に液体の透過測定が中心ですが、積分球を備えたモデルであれば、固体表面の反射率測定にも対応できます。

現場では「測定したいのは固体の色か、液体の成分か」を基準に使い分けることが重要です。たとえば、塗料メーカーでは調色や色管理には分光測色計、完成した塗料の成分分析には分光光度計を使用します。このように目的に応じた機器選定が、正確な測定と効率的な品質管理につながります。
項目 分光測色計 分光光度計
測定対象 反射光(不透明な固体) 透過光(液体・透明材料)
主な用途 表面色の評価・色差管理 濃度分析・吸光度測定
測定結果 L*a*b*値などの表色系 吸光度・透過率
適用業界 塗料・樹脂・印刷・繊維 化学・製薬・食品分析

分光測色計と色度計の違い

分光測色計と色度計はいずれも色を数値化する測定機器ですが、測定原理や用途、精度に大きな違いがあります。色度計は人間の目の感覚を模した赤・緑・青の3つのフィルターで三刺激値を測定する「刺激値直読タイプ」で、構造がシンプルかつ比較的安価なため、製造現場での日常的な品質チェックに向いています。ただし、特定の光源条件下での数値しか得られないため、異なる光源下での色の見え方の違いや、条件等色(メタメリズム)の検出には対応できません。

一方、分光測色計は可視光域の各波長で反射率を測定し、そのデータから三刺激値を算出します。多数のセンサーで波長ごとに光を分析するため、色度計よりも高精度で、異なる光源下での色の見え方も予測可能です。その分、価格は高めですが、研究開発や厳密な色管理が求められる場面で威力を発揮します。

日常的な品質管理には色度計を、光源条件や高精度管理まで考慮する必要がある場合は分光測色計を選ぶと適切です。
項目 色度計 分光測色計
測定原理 三刺激値直読方式(CIE等色関数近似フィルター) 分光方式(可視光域を多数の波長成分に分解して測定)
測定精度 標準的 高精度
価格帯 比較的安価 高価
サイズ コンパクト やや大きめ
メタメリズム対応 ×(光源変化に弱い) ◎(複数光源での予測可能)
主な用途 製造現場での日常検査 研究開発・厳密な色管理

まとめ

いかがでしたか?本記事では、分光測色計とは何かという基本から、測定原理・仕組み、具体的な用途や使い方、さらにベンチトップ型・ポータブル型・インライン型といった種類の違い、分光光度計や色度計との比較までを解説しました。分光測色計は、色を主観的な「見た目」ではなく客観的な「数値」として管理できる点が大きな特長であり、品質の安定化やクレーム低減に大きく貢献します。用途や求める精度に応じて適切な機種を選定することで、より効率的で信頼性の高い色管理が実現できるでしょう。本記事が、分光測色計の理解と導入検討の一助となれば幸いです。