製造現場で製品の品質管理を行う上で、粘度測定は欠かせない工程の一つです。しかし、レオメーターと粘度計、どちらを選べば良いのか悩まれている方も多いのではないでしょうか?測定精度、コスト、操作性など、考慮すべき要素は数多くあります。本記事では、両者の特徴や違いを徹底的に比較し、あなたの製造ラインに最適な測定機器の選定をサポートします。製品の特性や品質管理の目的に応じた、的確な機器選びのポイントを解説していきましょう。
レオメーターの原理とは?粘度計の基本的な違いも解説
製造業での材料評価において、レオメーターと粘度計は重要な測定装置です。これらの装置の基本的な原理と特徴、そして測定可能な物性値の範囲について詳しく解説します。特に、レオメーターは材料の粘弾性特性を総合的に評価できる精密機器として、品質管理から研究開発まで幅広く活用されています。回転型や振動型など様々な測定モードに対応し、液体から固体まで多様な試料の評価が可能です。また、温度依存性や時間依存性といった詳細なデータも取得できるため、製品開発における重要な判断材料となっています。
レオメーターの原理
レオメーターは、材料の粘弾性特性を総合的に測定できる精密機器です。測定原理としては、試料に一定のせん断力や応力を加え、その変形や流動特性を解析します。
代表的な回転型レオメーターでは、円筒状の測定治具を回転させながら試料にせん断応力を与え、その際の変形や抵抗を測定します。
この装置は、液体から固体まで幅広い試料の測定が可能で、粘性と弾性の両方の性質を同時に評価できます。また、温度変化による物性変化も把握できるため、製品の品質管理に不可欠な装置となっています。
特に製造業では、原料の受け入れ検査から製造工程の管理、最終製品の品質評価まで、様々な場面でレオメーターが活用されています。例えば、塗料やインクの製造では、塗布時の流動性や保管時の安定性を評価する際に重要な役割を果たしています。
測定モードには、定常回転測定、動的粘弾性測定、クリープ測定など、目的に応じた多様な選択肢があります。
レオメーターと粘度計の主な違い
レオメーターと一般的な粘度計では、測定原理や得られるデータの範囲に大きな違いがあります。
B型粘度計は、6、12、30、60回転/分など、特定の回転数でしか測定できません。一方、レオメーターは回転数を自由に設定でき、急激な流動や緩やかな静止時の粘度変化まで測定可能です。
レオメーターでは、測定対象がニュートン流体か非ニュートン流体か、さらに非ニュートン流体の場合、ビンガム性や擬塑性、チキソ性といった詳細な流体特性まで評価できます。
これらの違いは、実際の測定例でより明確になります。例えば、ハチミツは力を加えても粘度がほとんど変化しないニュートン流体ですが、マヨネーズやケチャップは力を加えると粘度が低下する擬塑性流体です。このような複雑な流体特性は、レオメーターでこそ正確に把握することができます。
製造現場での品質管理において、この違いは重要な意味を持ちます。工程管理の精度や製品の品質保証に求められる測定精度に応じて、適切な装置を選択する必要があります。
レオメーターと粘度計の得られるデータと評価できる物性値の範囲
レオメーターと粘度計では、測定可能なデータと評価できる物性値の範囲が大きく異なります。
レオメーターは、0.001Pa・sから1000Pa・s以上という広い粘度範囲で測定が可能で、温度依存性や時間依存性まで評価できます。特に、複雑な粘弾性材料の評価において、レオメーターは大きな強みを発揮します。
動的粘弾性測定では、貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G'')を同時に測定でき、材料の弾性的性質と粘性的性質を詳細に解析できます。一方、粘度計は単純な粘度測定に特化しており、測定範囲も限定的です。
項目 |
レオメーター |
粘度計 |
粘度測定範囲 |
0.001~1000Pa・s以上 |
0.1~100Pa・s程度 |
温度範囲 |
-50~200℃ (一部製品-160~1000℃) |
常温~100℃程度 |
測定項目 |
粘度、弾性率、降伏応力など |
粘度のみ |
測定モード |
回転、振動、クリープなど |
回転のみ |
レオメーターと粘度計の製造現場での使用における主な違い
製造現場では、レオメーターと粘度計の使い分けが重要になります。レオメーターは研究開発や品質管理の中核を担う精密機器として活用され、特に新製品開発時の物性評価や製造工程の最適化に威力を発揮します。例えば、自動車部品の製造では、樹脂材料の流動特性を詳細に分析し、成形不良を未然に防ぐことができます。
一方、粘度計は日常的な品質管理に適しています。操作が簡単で、現場作業者でも扱いやすく、短時間で測定結果が得られるため、製造ラインでの抜き取り検査などに最適です。塗料製造などでは、各工程での粘度確認に広く使用されています。
コスト面では、粘度計が数十万円台なのに対し、レオメーターは数百万円以上と高額です。また、レオメーターは専門知識を持った担当者が必要で、定期的なメンテナンスも欠かせません。このため、製品の要求品質や測定頻度、作業者のスキルレベルを考慮した使い分けが求められます。
キャピラリーレオメーターとは
キャピラリーレオメーターは、プラスチックや樹脂などの高分子材料の流動特性を評価する上で重要な装置です。試料をシリンダー内に充填し、ピストンで押し出す際の圧力変化を測定することで、材料の成形性や加工特性を正確に把握できます。特に、射出成形やフィルム成形などの工程設計において、高せん断速度域での測定が可能なため、実際の製造条件に近い環境での評価が可能です。この装置の特徴と原理について、以下で詳しく解説していきます。
キャピラリーレオメーターとは
キャピラリーレオメーターは、プラスチックや樹脂などの高分子材料の流動特性を測定する装置です。シリンダー内に試料を入れ、ピストンを駆動して試料をキャピラリーに押し出し、その際の圧力変化を測定することで、細い管(キャピラリー)を通過する際の流動特性を評価します。
特に射出成形やフィルム成形などの工程設計において重要な装置で、材料の流動性や成形性を正確に把握することができます。一般的な回転型レオメーターと比べて、実際の成形加工条件に近い高せん断速度域での測定が可能という特徴があります。
また、プラスチック、エラストマー、接着剤、各種ペースト材料など、幅広い材料の評価に活用されています。
キャピラリーレオメーターの原理
キャピラリーレオメーターの原理は、試料を円筒状のシリンダー内に充填し、ピストンで一定圧力を加えることで、細い管(キャピラリー)内を流動させる際の圧力損失と流量を測定します。
この測定原理により、実際の成形加工に近い高せん断速度域での粘度測定が可能です。特に、射出成形時の樹脂の流動性評価に適しています。
測定では、せん断応力、せん断速度、見かけ粘度などの重要なパラメータを取得できます。また、バグレーやラビノヴィッチの補正を適用することで、より正確な粘度データを得ることが可能です。
この装置の特徴は、高温・高圧下での測定が可能で、実際の成形加工条件に近い環境での材料評価ができる点にあります。
キャピラリーレオメーターの使用用途
キャピラリーレオメーターは、射出成形加工における材料の成形性評価や、樹脂の流動性評価に広く活用されています。特に自動車部品や電子部品の製造分野では、高精度な品質管理に必須の装置となっています。
具体的な使用例として、樹脂ペレットやコンパウンド材料の評価があります。これらの材料は高温で溶融させ、金型に充填する必要があるため、実際の製造条件に近い状態での流動性評価が重要です。キャピラリーレオメーターを使用することで、金型内での樹脂の流れやすさを事前に予測し、最適な成形条件を設定できます。
さらに、フィルムやシート製造においても、材料の延伸性や押出特性の評価に活用されています。製品の厚み精度や外観品質に影響を与える材料特性を把握することで、安定した製品品質を確保することができます。また、新規材料開発時の物性評価や、材料の組成最適化にも重要な役割を果たしています。
クリープメーターとレオメーターの違い
クリープメーターとレオメーターの違いについて、3つの重要な観点から解説していきます。まず、基本的な測定方法と物性評価の違いについて説明します。続いて、両装置のデータ分析機能と測定精度の違いを詳しく解説します。最後に、それぞれの装置の導入・運用コストや作業効率の面から、実務での使い分けのポイントを紹介します。これらの違いを理解することで、製造現場での品質管理に最適な装置を選定することができます。各項目ごとに、具体的な事例や数値を交えながら、わかりやすく説明していきましょう。
測定方法の違い
クリープメーターとレオメーターは、材料の変形特性を測定する装置ですが、その測定方法と得られるデータに大きな違いがあります。クリープメーターは、一定の力を試料に加え続けた時の変形量を測定する装置です。これに対し、レオメーターは、試料に周期的なせん断力を与え、粘性と弾性を同時に測定できる装置です。
特に製造現場での品質管理において、クリープメーターは食品やゴムなどの硬さや柔らかさを定量的に評価するのに適しています。一方、レオメーターは、より広範な粘弾性特性を評価でき、温度依存性や時間依存性まで詳細に分析することが可能です。
製造業での選定において重要なポイントは、測定対象の物性と必要なデータの種類です。例えば、単純な硬さ評価だけでよい場合はクリープメーターで十分ですが、複雑な物性評価が必要な場合はレオメーターが適しています。
分析と評価の違い
クリープメーターとレオメーターの測定データ分析においても、大きな違いが見られます。クリープメーターは、応力緩和試験やクリープ試験といった単一の測定モードに特化しており、得られるデータは比較的シンプルです。一方、レオメーターは、応力制御・ひずみ制御・振動測定など、複数の測定モードを組み合わせることができ、材料の複雑な物性を多角的に評価可能です。
特に、レオメーターは周波数掃引試験により、材料の粘弾性スペクトルを取得でき、さらに応力・ひずみ・温度などの測定条件を変えることで、より詳細な物性評価が可能です。このような特徴は、高分子材料や複合材料の開発現場で重要な役割を果たしています。
作業効率と運用コストの違い
レオメーターの作業効率と運用コストにおいても、クリープメーターとの大きな違いが見られます。クリープメーターは基本的な保守管理のみで済むため、運用コストを抑えられる利点があります。一方、レオメーターは高度な測定が可能な反面、定期的なキャリブレーションや専門的なメンテナンスが必要です。
特に設備投資の観点では、レオメーターの導入コストはクリープメーターの2〜3倍程度となることが一般的です。しかし、レオメーターは幅広い測定モードと高い汎用性を持つため、複数の評価装置を統合できる可能性があります。
また、レオメーターは温度制御ユニットや各種センサーなど、豊富なオプション機器を組み合わせることで、測定の幅を広げることができます。これにより、将来的な研究開発や品質管理の要求に柔軟に対応できる点も、重要な選定ポイントとなっています。
キュラストメーターとレオメーターの違い
物質の物性を評価する上で、キュラストメーターとレオメーターには、それぞれ異なる特徴と用途があります。本節では、両装置の測定原理や得られるデータの違い、さらに自動化や生産性の観点からの比較を詳しく解説します。これらの違いを理解することで、製造現場での品質管理に最適な装置を選定することができます。特に、レオメーターの高度な分析能力と自動化機能は、現代の製造業における品質管理の効率化に大きく貢献しています。
測定方法の違い
キュラストメーターとレオメーターは、どちらも物質の硬さや弾性を測定する装置ですが、その測定方法と得られるデータに大きな違いがあります。キュラストメーターは、一定の圧縮力を加えた際の試料の変形挙動を測定し、主にゴムやエラストマーの硬さや弾性を評価する装置です。
一方、レオメーターは、試料にせん断応力や振動を与え、粘性と弾性の両方の性質を同時に測定できる高度な分析装置です。例えば、プラスチックやゴムの製造工程では、レオメーターを使用することで材料の流動性や加工性を詳細に把握できます。
また、レオメーターは、機種によっては-160℃から1000℃までの広い温度範囲で測定が可能で、様々な環境下での材料特性を評価できる点も、キュラストメーターとの大きな違いとなっています。
データ取得方法と分析能力の違い
レオメーターとキュラストメーターの測定におけるもう一つの重要な違いは、データの取得方法と分析能力にあります。キュラストメーターは、主に圧縮時の応力変化を一方向から測定し、硬さの指標となるデータを取得します。
一方、レオメーターは、回転や振動などの多様な測定モードを備え、せん断応力、粘度、弾性率などの複数のパラメータを同時に評価できます。これにより、材料の内部構造や分子レベルでの物性変化まで詳細に分析することが可能です。
また、レオメーターは例えば0.5mlという微量サンプルでも測定が可能な点も特徴です。これは、高価な材料の開発段階や品質管理において、大きなコスト削減につながります。
生産性の違い
キュラストメーターとレオメーターの導入検討において、自動化と生産性の観点も重要な違いとなります。レオメーターは、サンプルの自動供給システムや温度制御の自動化機能を備え、連続的な測定が可能です。これにより、作業者の負担を軽減しながら、多数のサンプルを効率的に評価できます。
一方、キュラストメーターは、サンプルの設置や測定条件の設定に手動操作が必要で、1回の測定に比較的時間がかかります。しかし、操作が単純で専門知識が少なくても使用できる利点があります。
両装置の選定では、測定の自動化ニーズと作業者のスキルレベルを考慮する必要があります。レオメーターは、製造ラインに組み込んでインライン測定を実現できるため、リアルタイムな品質管理が求められる現場に適しています。
テクスチャーアナライザーとレオメーターの違い
材料や製品の物性評価において、テクスチャーアナライザーとレオメーターはそれぞれ異なる特徴と役割を持っています。レオメーターは、物質の粘性と弾性を同時に評価できる高度な分析装置であり、温度変化による物性変化も把握できます。一方、テクスチャーアナライザーは、主に食品や医薬品の硬さや食感を評価する装置として知られています。ここでは、両装置の測定原理や得られるデータの違い、さらに設備投資や維持管理コストの観点から、その特徴と使い分けのポイントについて詳しく解説します。
測定方法の違い
テクスチャーアナライザーとレオメーターは、材料の物性を測定する装置として広く利用されていますが、その測定方法と得られる情報に大きな違いがあります。テクスチャーアナライザーは主に食品などの硬さや弾力性を測定する装置で、プローブと呼ばれる測定子を一定速度で試料に押し込み、その際の抵抗力を測定します。
一方、レオメーターは試料に回転や振動などの様々なずり変形を与え、粘性と弾性の両方の性質を同時に評価できます。例えば、チョコレートの製造工程では、テクスチャーアナライザーで最終製品の食感を評価し、レオメーターで溶かした状態での流動性を確認するというように、用途に応じて使い分けることが重要です。
レオメーターは0.001Pa・sから1000Pa・s以上までの広い粘度範囲で測定が可能で、温度変化による物性の変化も詳細に評価できます。
解析能力の違い
テクスチャーアナライザーとレオメーターの解析能力にも、大きな違いが見られます。レオメーターは、応力制御や振動測定など複数の測定モードを組み合わせることで、粘弾性スペクトルや動的粘弾性など、より詳細な物性データを取得できます。
テクスチャーアナライザーは、圧縮試験や引張試験など比較的単純な測定に特化しており、操作が簡単で即座に結果が得られる利点があります。一方、レオメーターは材料の内部構造や分子レベルでの物性変化まで分析可能です。
特に医薬品や化粧品の開発現場では、レオメーターを使用して製品の安定性や使用感を数値化し、品質の向上に活用しています。また、レオメーターは測定データを自動的に解析し、複雑な粘弾性パラメータを算出できる高度なソフトウェアを備えています。多くの現代的なレオメーターでは、測定データを自動的に解析する高度なソフトウェアを搭載しており、貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G'')、tanδ、複合粘度など、複雑な粘弾性パラメータを迅速に算出できます。この自動解析機能により、研究開発段階での詳細な材料評価から、製造現場での品質管理まで幅広い用途に対応できます。
運用と維持コストの違い
レオメーターとテクスチャーアナライザーの運用面での大きな違いは、設備投資と維持管理コストにあります。レオメーターは高度な制御システムと分析ソフトウェアを備えているため、導入コストは一般的に800万円から2000万円程度と高額です。さらに、年間の保守費用も本体価格の5~10%程度が必要となります。
一方、テクスチャーアナライザーは200万円から500万円程度で導入でき、維持管理も比較的容易です。ただし、レオメーターは温度制御ユニットや各種センサーなどのオプション機器を追加することで、測定の幅を大きく広げることができます。
特に自動化の面では、レオメーターはサンプルの自動供給システムや温度制御の自動化により、連続測定が可能です。これにより、多検体を扱う品質管理現場での作業効率を大幅に向上させることができます。投資対効果を考える際は、測定の自動化による人件費削減も考慮に入れる必要があります。
製品品質管理における各装置の活用シーン
製品品質管理において、各種の測定装置は重要な役割を果たしています。特にレオメーターは、原料受入れ検査から製造工程管理、最終製品の評価まで幅広く活用されています。ここでは、それぞれの工程でのレオメーターの具体的な活用方法と、実際の測定事例を紹介します。さらに、インライン測定システムなどの最新技術を活用した効率的な品質管理手法についても解説します。粘弾性測定を通じて、製品の物性を定量的に評価し、安定した品質を確保するためのポイントを詳しく見ていきましょう。
原料受入れ検査での活用方法
原料受入れ検査では、レオメーターを使用して原料の粘弾性特性を測定し、規格値との比較による品質判定を行います。測定時は、0.5ml~2mlという少量のサンプルで評価が可能なため、貴重な原料の無駄を防げます。(具体的なサンプル量は使用するジオメトリや装置モデルに依存するため、個々の装置の仕様確認が必要です)
機種によっては-160℃から1000℃までの広い温度範囲で測定できるため、様々な原料に対応可能です。特に、粒子の分散状態や沈降性の評価に優れており、原料の均一性を確実に確認できます。
判定基準は、粘度値や弾性率の上限値・下限値を設定し、その範囲内に収まっているかを確認します。これにより、製品品質の安定化と不良品の混入防止を実現できます。
製造工程における品質管理のポイント
製造工程での品質管理において、レオメーターによる測定は、原料投入後、混合工程、加熱工程、そして最終調整の各段階で実施します。
各工程での測定では、粘度変化、せん断応力、貯蔵弾性率などの物性値を連続的にモニタリングします。これにより、製品の状態をリアルタイムで把握し、必要に応じて製造条件を調整できます。
特に重要なのは、混合工程での分散状態の確認と、加熱工程での温度による物性変化の追跡です。例えば、塗料製造では、顔料の分散度合いを粘弾性測定で評価し、最適な混合時間を決定します。
また、インライン測定システムを導入することで、製造ラインを止めることなく連続的な品質管理が可能です。これにより、品質の安定化と生産効率の向上を同時に実現できます。
最終製品の品質評価での活用法
最終製品の品質評価では、レオメーターを活用して製品の特性を多角的に分析します。具体的には、粘弾性測定により、製品の流動性、弾力性、表面感触などを定量的に評価できます。
レオメーターによる最終検査では、変形や加重に対する応答性を詳細に分析できるため、製品の使用感や耐久性を正確に把握できます。例えば、化粧品では塗布時の感触や伸びの良さ、食品では口当たりや溶け具合といった官能評価を数値化することが可能です。
また、温度変化による物性変化も評価できるため、製品の保管安定性や使用環境での性能変化も予測できます。これにより、製品の品質保証期間の設定や保管条件の最適化にも活用できます。さらに、測定データは品質管理記録として保存され、製品トレーサビリティの向上にも貢献します。
導入時の検討ポイントと費用対効果
レオメーターや粘度計の導入を検討する際、費用面や運用面での違いを理解することが重要です。本章では、導入コストや維持費用の比較、測定精度と操作性の違い、さらに製品別の選定ポイントまで、詳しく解説していきます。特に、製造現場での実務経験に基づいた具体的な判断基準や、投資効果を最大化するためのポイントを紹介します。これらの情報は、予算計画の立案や、実際の導入判断の際に役立つ実践的な内容となっています。
装置の導入コストと維持費用の比較
レオメーターと粘度計の導入を検討する際、コストは重要な判断材料となります。
レオメーターの本体価格は300万円から1000万円程度で、高性能モデルでは2000万円を超えるものもあります。これに対し、一般的な回転式粘度計は50万円から200万円程度で導入できます。
維持費用の面では、レオメーターは定期的なキャリブレーションや専用ソフトウェアの更新が必要です。年間の保守費用は本体価格の5~10%程度で、ソフトウェア保守料が別途20~30万円程度かかります。
一方、粘度計は構造がシンプルで、年間のメンテナンス費用は5~10万円程度に抑えられます。ただし、測定できる項目が限られるため、複数の測定装置が必要になるケースもあります。
項目 |
レオメーター |
粘度計 |
導入コスト |
300万円~2000万円以上 |
50万円~200万円 |
年間保守費用 |
本体の5~10%+ソフトウェア保守料 |
5~10万円程度 |
追加費用 |
ソフトウェア更新料 |
消耗品費 |
測定項目数 |
多項目測定可能 |
限定的 |
測定精度と操作性からみた導入判断のポイント
レオメーターの導入を検討する際、測定精度と操作性は重要な判断基準となります。最新のレオメーターは、0.001Pa・sから1000Pa・s以上までの広い粘度範囲で、誤差±1%以内の高精度測定が可能です。
特に製造ラインでの品質管理において、自動サンプリングシステムと温度制御機能を組み合わせることで、24時間連続での測定が実現できます。これにより、作業者の負担を軽減しながら、安定した品質管理が可能となります。
操作性については、タッチパネル式の直感的なインターフェースと、測定条件のプリセット機能により、専門知識がなくても1週間程度の研修で基本操作を習得できます。
ただし、高度な測定や解析には専門的な知識が必要となるため、導入時には十分なトレーニング期間を確保することが推奨されます。
製品別おすすめの測定装置選定ガイド
製品の特性や用途に応じて、最適な測定装置の選定基準は異なります。液状製品の品質管理では、一般的な回転式粘度計で十分な場合が多く、特に生産ラインでの日常的な品質管理に適しています。一方、新製品開発や高機能材料の評価には、粘弾性特性を詳細に分析できるレオメーターが不可欠です。
食品や化粧品業界では、温度変化や経時変化が製品の使用感や品質に大きく影響するため、-160℃から1000℃まで対応可能なレオメーターが推奨されます。プラスチックや樹脂製品の製造では、実際の加工条件に近い高せん断速度域での測定が求められるためキャピラリーレオメーターが最適です。
業界 |
推奨測定装置 |
主な測定項目 |
食品・化粧品 |
レオメーター |
温度依存性、経時変化 |
プラスチック |
キャピラリーレオメーター |
高せん断特性 |
一般工業 |
回転式粘度計 |
基本的な粘度測定 |
国内外のレオメーター・粘度計に関連する企業
最後に、国内外のレオメーター・粘度計に関連する、事業規模の大きいメーカーをご紹介します。
TAインスツルメンツ(TA Instruments)
TAインスツルメンツ(TA Instruments) は、アメリカ を拠点とする世界的な熱分析装置およびレオメーターのトップメーカー です。現在はウォーターズ(Waters Corporation) の子会社として運営されており、材料特性評価分野で圧倒的な信頼を得ています。
レオメーター、粘度計、機械特性試験、熱分析装置などの分野で高精度な計測機器を提供しています。
アントンパール(Anton Paar)
アントンパール(Anton Paar) は、オーストリア に本社を置く 精密測定機器の世界的リーダー です。特に、レオメーター、粘度計、密度計などの分野で高い評価を受けており、科学・産業用途において高精度な計測機器を提供 しています。
主力製品のMCRシリーズ レオメーターは、 研究・工業用途の両方に対応し、粘弾性測定において世界トップクラスの精度を誇っています。
アントンパール社製 MCR evolutionシリーズ
マルバーン・パナリティカル(Malvern Panalytical)
マルバーン・パナリティカル(Malvern Panalytical) は、イギリスに本社を置く世界的な分析機器メーカー であり、粒子計測、材料特性評価、レオロジー分析などの分野で高い評価を受けています。2017年に、Malvern Instruments(マルバーン・インスツルメンツ) と PANalytical(パナリティカル) が統合され、現在の企業名となりました。
同社は、ナノ材料からバルク材料までの幅広いスケールでの特性評価技術を提供し、製薬、化学、食品、エネルギー、材料科学、電子部品 など多様な分野で利用されています。
日立ハイテク(Hitachi High-Tech Corporation)
日立ハイテク(Hitachi High-Tech Corporation) は、日本を代表する総合計測・分析機器メーカー であり、日立製作所グループ の中核企業の一つです。最先端の分析装置や計測機器を開発・提供し、科学技術、電子デバイス、医療、環境・エネルギー など幅広い分野で活躍しています。
日立ハイテクのレオメーター(粘弾性測定装置)は、主に材料特性評価 や 品質管理 のために活用され、化学、製薬、食品、ポリマー、半導体 などの業界で広く使用されています。
東洋精機製作所(Toyo Seiki Seisaku-Sho, Ltd.)
東洋精機製作所(Toyo Seiki Seisaku-Sho, Ltd.) は、日本を代表する試験機・測定機器メーカー であり、特に材料試験機、物性測定機器、レオメーター などの分野で高い評価を得ています。1955年の創業以来、プラスチック・ゴム・繊維・塗料・フィルム・食品 などの材料特性評価に特化した測定機器を開発 し、日本国内のみならず海外市場にも広く展開 しています。
まとめ
製造業で重要な役割を果たすレオメーターについて、基本原理から各種測定装置との違いまで幅広く解説しました。粘度計との違いを起点に、キャピラリーレオメーター、クリープメーター、キュラストメーター、テクスチャーアナライザーなど、各測定装置の特徴と使い分けに理解を深めていただけたでしょうか。
製造ラインでの実践的な活用を検討されている皆様の、最適な測定装置の選定に本記事が貢献できると幸いです。